「木犀やしきりに匂ふ宵の程」
みなさんこんにちは、ケアプラス今治の看護師・川下です。
夏が過ぎ、朝夕の寒さを感じますと、もう冬の足音がそこまで来ているかのようですね。急いで衣替えをした方も多いのではないでしょうか。秋の装いで公園を散策しておりますと、ふと甘い匂いが漂ってきます。そう、これこれ。金木犀(キンモクセイ)の甘い香りを嗅ぐともう秋が来たんだなぁとしみじみ感じますよね。デイの中にも利用者様から頂いた金木犀の花が咲き誇り、甘い香りで満たされています。
さて、冒頭の俳句を詠んだのは愛媛県人なら知らない人はいないであろう明治を代表する文学者、正岡子規です。
「柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺」は秋の俳句としてはあまりにも有名ですね。そんな正岡子規ですが、若くして病床に伏し35歳で早くもこの世を去ってしまいます。なぜそのような運命になってしまったのか。今回は子規を蝕んだ病気「脊椎カリエス」について紹介したいと思います。
子規は若くして結核を患い、さらに骨結核と呼ばれる「脊椎カリエス」に掛かってしまいます。脊椎カリエスは脊椎骨が犯され破壊され変形します。さらに膿が溜まり漏れだします。そして叩打痛、圧痛、神経痛、体動時痛が現れ、進んでくると、亀背、脊髄麻痺、冷腫瘍などを伴い、想像するだけであまりにも苦しい闘病生活を送ることとなります。脊椎カリエスは結核菌をきっかけとして発症し、免疫力低下から悪化します。
原因は子規の甘党ぶりにあったと考えられます。
柿食えば~の句の解説によると、子規は大変な果物好きだったそうです。どれほどかというと本人の記録により「一度に柿を11個も食べた」「ブドウを一度に何房も平らげた」などと記してあったほどです。いくら果物が大好物だといってもこれは度がすぎる量ですよね。柿は栄養価が高い、「百果の王」と呼ばれる果物ですから、病人にはありがたいと思われたかもしれません。
しかしどんなに栄養価の高いものであっても大量に食べれば毒になります。
日記に残されている彼の食事の内容をもう少し紹介すると、朝におかゆを4杯、昼におかゆを4杯、夜に奈良茶飯という炊き込みご飯を4杯、さらに牛乳を1合、せんべい、菓子パンを10個、昼ごはんの後に梨を2つ、夜ご飯の後に梨を1つと間食の量も糖質の摂取がかなり多いです。
近年の栄養学で白砂糖は「エンプティカロリー(空の熱量)」と呼ばれます。この栄養のない熱量が燃やされると大量の酸化物が体内に生成され血液リンパ液などの体液が酸性に傾いてしまいます。これをアシドーシスと呼び、身体は様々な症状に襲われることになります。体液の酸性化が進行すると死に至るため、体はその酸性を中和することで何とか解消しようとします。中和のためにはカルシウムイオンが必要なのですが、使われるカルシウムは骨から溶け出して血液に供給されることになります。その状態が続くと全身の骨格はスカスカに脆くなってしまい、病原菌に侵されてしまうのです。これがカリエスです。カリエスが最悪の所まで進むと脊椎骨までも犯されてしまい、身体を支えることが不可能になり寝たきりの生活になってしまいます。
子規はあまりにもひどい偏食と糖質の過剰摂取により、なるべくして脊椎カリエスとなってしまったのです。医療の進んだ現在では結核はほぼ完治する病気となっていますが、糖質の取り過ぎが糖尿病など、他の様々な病気の原因となっている事は否めません。
皆さんは甘い誘惑に惑わさないよう血糖値を上げない生活を心掛け、いつまでも健康で長生きを続けていただきたいと思います。
それではまた次回のブログでお目にかかりましょう。